このページでは、レーザー加工法の1つである「クリーンカット」について解説しています。ステンレスの切断などで特に美しい仕上がりを求める場合に用いられるクリーンカットの特性やメリットを把握しておきましょう。
クリーンカットとは、レーザー加工によってステンレスなどを切断する際に、不活性ガスの窒素をアシストガスとして利用することで、通常のレーザーカッティングよりも美しく丁寧な仕上がりを得られる加工法です。別名で「窒素切断」や「無酸化切断」とも呼ばれます。
従来のレーザーカッティングでは、レーザー加工後に研磨や化学処理などで表面を綺麗に仕上げることが行われてきましたが、レーザー加工に加えて仕上げ処理が必要になるため、どうしても工期やコストが拡大してしまうことがデメリットでした。
クリーンカットは工期を短縮し、品質向上を目指すことができる技術です。
ただし、クリーンカットに対応しているかどうか、またクリーンカットによる仕上がりがどの程度の品質レベルであるかどうかといった実状は、依頼するレーザー加工業者によっても異なるため、あらかじめクリーンカットの特性や業者の実力などをチェックすることが大切です。
窒素を活用するクリーンカットでは、レーザーカッティングの際に切断面に酸化皮膜が発生しないため、仕上がりが美しくなることがメリットとなります。
また、酸化皮膜が発生しないということは金属素材そのものが露出するため、素材の種類や特性、色などによっては金属光沢が美しく保たれた切断面となることもポイントです。
なお、ステンレスのレーザー切断のアシストガスに酸素やエアーを使うと、切断面が黒っぽく変色します。
化学的に酸化皮膜が発生しないため、そもそもレーザー加工後に酸化皮膜を除去する作業が必要ありません。
そもそも酸化皮膜の除去には、被膜が存在している部分を研磨したり、化学処理によって被膜を除害したりといった追加の加工が必要となります。そのため、クリーンカットを使えば仕上げ処理の手間やコストを削減することが可能です。
余分な加工を行う必要がないということは、レーザー加工後の処理を前提とせずに加工プランを構築できるということです。そのため、クリーンカットは加工の自由度が通常のレーザーカットよりも高くなります。
クリーンカットではアシストガスに窒素を使用しますが、窒素ガスは酸素やエアーと比較してコストが高いことがポイントです。つまり、クリーンカットは必然的に通常のレーザーカッティングよりもコストが高くなってしまう加工法といえます。
また、美しく仕上げようとするほど窒素ガスの使用量が増えるため、一層にコストが増大していくこともデメリットです。
酸素はレーザーの燃焼を促進するため、レーザーカッティングで酸素を使用した場合、レーザーによる切断効率が向上することもあります。しかし窒素ガスは燃焼反応を促進させないため、例えば厚みのある素材を対象とした場合などに加工速度が低下してしまう恐れもあるでしょう。
ただし、全体の工期を短縮できるため、結果的に作業時間が減少する可能性はあります。
素材に酸化皮膜を発生させないことがクリーンカットのメリットですが、むしろ酸化皮膜によって表面の錆びなどが予防されていることもあります。つまり、クリーンカットによって酸化皮膜が発生しないことで、結果的に表面の錆びリスクを回避できないかも知れません。
また、加工機の状態や対象ワークの状況によって加工不良の発生率が上昇しやすくなります。
クリーンカットでは一般的に窒素ガスが使用されますが、その他にもアシストガスとして利用されるガスが存在しています。
ステンレスを対象としてクリーンカットを行う場合、一般的に使用されるアシストガスは窒素ガスです。
窒素ガスを用いることで金属光沢の美しい切断面が実現できて、酸化皮膜を生じさせることもありません。そのため、そのまま美観を保って使用できるだけでなく、溶接作業などの次の工程に進みやすいこともポイントです。
ただし、チタンをカットする際は窒素ガスによる窒化を考慮しなければなりません。
アルゴンもまた窒素と同様に不活性ガスとなり、クリーンカットのアシストガスとして利用可能です。
アルゴンを使用する場面としては、窒素ガスによって窒化してしまうチタンをクリーンカットしたい場合が想定されます。なお、窒素よりもコストが高いため、ステンレスなどをカットする場合は窒素が一般的です。
クリーンカットは通常のレーザー加工による切断よりも、酸化皮膜のない切断面など美しい仕上がりを実現できる技術であり、全体の工期を短縮したい場合やカット後の状態をそのまま製品化したい場合などにメリットが多くなります。窒素ガスやアルゴンガスを使用するため従来のレーザーカッティングよりもコストが高くなってしまいますが、切断後に表面処理加工の工程を行わなくて済むため、トータルで考えると低コスト化を実現できる場合もあるでしょう。
反面、技術力や作業環境によって品質に差が生じるため、信頼できる業者へ依頼することが大切となります。
UV、グリーン、1μmの3波長を自動切り替え、パルス幅は340fsから10psまで可変。各種材料に合ったレーザー光の選択&適した非熱加工が行えます。
20KWの高出力で20,000㎜/minを超える高速切断が可能、プラズマを上回る切断速度を実現。40㎜までの厚板切断に対応しています。
木材・アクリルはもちろん、紙、樹脂、革まで幅広い対象物に刻印・切断が可能。つまようじほどの細かな対象物にも微細な処理を施すことができます。