ワイヤーカットは真鍮製のワイヤーに電気を流して爆発放電現象を発生させ、その熱によって金属ワークを切断加工する技術です。レーザーを照射して切断加工するレーザー加工機とワイヤーカットの違いや、ワイヤーカットの特徴などをまとめました。
ワイヤーカットとは、真鍮製の細いワイヤーに電気を流して、それによって発生する爆発放電の熱を利用して金属板などのワークを切断加工する方法です。レーザー加工のようにレーザー光による熱エネルギーを利用するのでなく、ワイヤーに流される電気の力によって熱を発生させて金属を切っていくことが特徴となります。
ワイヤーカットは導電性を有する金属ワークであれば、その硬度にほぼ関係なく切断することが可能であり、通常の切削加工では変形してしまう薄板素材や難削材のステンレスや超合金といったワークにも活用することが可能です。
ワイヤーカットの応用範囲は幅広く、自動車製造や航空機の製造など様々な場所で利用されています。
ワイヤーカットでは、導電性に優れた真鍮製の両端を機械で固定して電気を流し、その状態のワイヤーを金属ワークへ近づけることで、ワイヤーとワークの間に爆発放電現象を発生させます。また、この爆発放電によって発生する温度は6千度以上にも達するため、金属ワークをスムーズに切断することが可能です。
ワイヤーカットではワイヤーとワークの間に爆発放電が生じることを必須条件としますが、言い換えれば爆発放電が起きるワークであれば可能加工になるため、導電性を有する金属ワークであればおよそ大部分の素材を加工することができます。
反面、瞬間的に発生する熱の影響を緩和するため、ワイヤーカットは純粋で満たされた加工槽に加工機とワークを沈めた状態で加工されることも特徴です。
ワイヤーカットはワイヤーとワークとの間に放電現象が発生しなければ加工できないため、原則として導電性のないワークをカットすることはできません。しかし、言い換えれば導電性のあるワークであれば加工できるということであり、通常の切削加工などでは変形したり、硬度が高すぎて処理が困難だったりする難削材でも切断できる点がメリットです。
そのため超合金やステンレスといった難削材であり、さらに表面の反射率が高くてレーザー加工でも対処困難なワークでもワイヤーカットであれば簡単に処理することができます。
ワイヤーカットは様々な形状で対象をカットできる上、ワイヤーはとても細いため、精密な加工を再現しやすい点もメリットです。具体的には精度0.005mmレベルの幅の切断加工が可能とされており、また薄い金属板などでも変形させることなく切断できる点は見逃せません。
加えて、ワイヤーカットとその他の加工法を組み合わせた複合加工を採用することにより、多種多様なワークや加工形状を再現したり、少量多品種のサンプル制作などに応用したりといった利用法も検討できます。
ワイヤー製の真鍮そのものは安価な部品であり、加工機のメンテナンスなどに要するランニングコストを抑えやすいこともポイントです。
その他にもワイヤーとワークは直接に接触せず、物理的な圧力を加えられないためバリの発生を抑えられたり、特殊工具などが必要でなかったりと様々なメリットが想定されます。
加工槽を満たしている冷却液は不純物を取り除いた純水であり、熱影響や溶液の性質による影響を抑えられるといった点も重要です。
ワイヤーカットのデメリットを挙げる場合、例えば金型を使った加工や切削加工などと比較して切断加工が遅いということが考えられます。
ワイヤーカットはワイヤーでワークを押し切るのでなく、あくまでも爆発放電による熱によって加工部分を溶かして切断する加工です。そのため加工速度には限界があり、大量生産などを目的とした部品の量産体制を構築する目的には適しません。
量産品を短納期で加工する場合、他の加工法を選択することになるでしょう。
そもそも導電性のないワークを加工できないことは大きなデメリットです。また、ワークの底の部分だけをくり抜くといった加工や、水平方向にワークを剥離・研磨するといった加工には適していません。
ワイヤーカットはあくまでも切断加工に特化した技術であり、底部分への加工や水平方向の加工を希望する場合は他の加工法を検討する必要があります。
なお、加工には純水を使った加工槽が必要になり、加工機の環境としては電気だけでなく水道設備も用意しなければなりません。そのためワイヤーカットの専用設備や技術を備えている加工会社にしか依頼できないといった制限もあります。
ワイヤーカットは導電性のあるワークであれば難削材や厚みのある金属板でも加工できますが、反面、導電性のないワークは処理できません。対するレーザーカットは金属だけでなく紙や木材、皮革なども加工できる反面、表面の反射率が高くて光を散らしてしまうようなワークや厚みの大きいワークの加工は困難です。
またワイヤーカットはゆっくりとワークを動かして高精度な作業を再現しますが、レーザーカットではレーザーを反射させてワーク表面を走査させるため、加工速度では明確にレーザーカットの方が優れています。そのため低速でも高精度の切断が必要であればワイヤーカット、量産体制を構築してスムーズな作業を希望する場合はレーザーカットにするといった使い分けが重要となります。
UV、グリーン、1μmの3波長を自動切り替え、パルス幅は340fsから10psまで可変。各種材料に合ったレーザー光の選択&適した非熱加工が行えます。
20KWの高出力で20,000㎜/minを超える高速切断が可能、プラズマを上回る切断速度を実現。40㎜までの厚板切断に対応しています。
木材・アクリルはもちろん、紙、樹脂、革まで幅広い対象物に刻印・切断が可能。つまようじほどの細かな対象物にも微細な処理を施すことができます。