ファイバケーブルは知っていても、ファイバーレーザーとなると仕組みや原理を把握していないことが多いのではないでしょうか。ファイバーレーザーとはそもそも何なのか、どんなメリットがあるのか確認してみてください。
ファイバーレーザーとは特殊なファイバに光を通し、特定の波長を持った光を増幅し発生させるレーザーです。
光は細いファイバの中で、壁に反射しながら進んでいきます。そのとき、ファイバ中央にあるコアを通過することでレーザーとなります。
人の目で見える可視光の波長は380~800nmまで。
ファイバーレーザーの波長は1070nmであり、これは赤外線に該当するため、人間の眼では可視できません。
ファイバーレーザーにはどのようなメリットがあるのか、わかりやすく解説します。
ファイバーレーザーでは、レーザー光をファイバーによって直結することができます。
そのため対象までケーブルによってレーザーを誘導できるのが利点。
加工物への焦点設計が容易で、レーザー加工機に向いていると言えます。
レーザーを発生させるファイバは一般的に細長いため、冷却しやすいというメリットが。
ファイバはケーブルを長くすることが簡単で、さらには高出力にも寄与します。
ファイバーレーザーはメンテナンスを省力化、もしくは不要で利用できます。
ファイバの中央を走る細いコアで光の誘導が行われ、レーザーを発生させる仕組みなので、増幅する効率が良いのが特徴です。
ファイバケーブルは振動に強いという性質を持っています。
ファイバ自体が細長いことから、さまざまな形状にできる上、コンパクト化も可能です。
寿命を長く保て、特に長寿命の半導体レーザーと組み合わせることでコストパフォーマンスをさらに向上させることができます。
複数のメリットを考えられるファイバーレーザーですが、一方でデメリットについても把握しておく必要があります。
例えばファイバーレーザーはレーザー溶接で利用する際にスパッタガスが発生しやすくなるため、加工品質を維持するために加工速度を制限しなければなりません。またアシストガスやコンプレッサなどの選定も重要です。適した素材、加工用ガスを選ばなくては、品質を維持できません。
ファイバーレーザーが発生する原理は、光ファイバの性質と、その中を通過する際の光の挙動によって説明されます。
まず、励起された光(励起光)が光ファイバの片端へ入射されると、その光は光ファイバの内部で中央のコアをまたいで全反射を繰り返しながら、光ファイバの先端に向けて進んでいきます。この際、励起光そのものは減衰していくものの、全反射のたびに光がファイバ中央のコアを通過して励起され、強力なエネルギー(レーザービーム)として収束されるという仕組みです。
光源から発振された励起光が光ファイバ内の希土類コアを通過することによって反転分布状態が形成され、閾値を超えた時点でレーザー光となり、さらに光の全反射が繰り返されてレーザー光の強度が増幅されていくという構成です。
レーザー共振器構成は高出力なファイバーレーザーやCW発振などを必要とする場合に利用されます。
光の全反射による往復をベースとするレーザー共振器構成に対して、MOPA構成はアクティブファイバコアへシーダー信号を入力し、それを一度だけ増幅するという構成です。シーダー信号をパルスジェネレーターによって管理できるためパルス発振を必要とする加工に適性がありますが、高出力を求める場合は増幅器を複数用いなければなりません。
ファイバーレーザーにおいてアクティブファイバとして利用されるものは大きく2種類が存在しています。
まず、レーザーダイオードの励起出力が1W以下の時に使用されるものが「シングルクラッド/シングルモードファイバ」です。一方、レーザーダイオードの出力が1Wを超えるようなシステムの場合、「ダブルクラッド/マルチモードファイバ」というアクティブファイバが用いられます。
そのためハイパワー加工機を利用する場合は後者のダブルクラッド/マルチモードファイバが適切な種類となります。
ファイバーレーザーは、光ファイバーを増幅媒体として用いることで、高いビーム品質とエネルギー効率を実現します。ステンレスやアルミニウムなどの金属材料を高速かつ高精度に切断・溶接できる点が大きな強みです。
熱影響が少なく、加工後の歪みを抑えた美しい仕上がりを得られるのも特長です。高いパルス制御性を生かして微細な加工や複雑な形状にも対応できるため、部品製造や精密部品加工など幅広い分野で利用されています。
ファイバーレーザーは金属加工には強みを発揮しますが、一方で反射率が高い材料の加工では、レーザーが反射されて効率が低下しやすいという弱点があります。プラスチックや木材などの非金属材料を切断・彫刻する際は、CO₂レーザーと比べると波長特性の違いから加工しにくい場合があります。
高出力を要する分厚い材料の切断では、レーザーの集光特性によって速度や品質が安定しないケースがあるため、事前に十分な検証が必要です。これらの点を理解したうえで、用途に適したレーザーを選択することが重要です。
ファイバーレーザーは特にステンレスやアルミなどの板金加工で、その真価を発揮します。例えば、自動車部品や産業用機械の部材など、精度とスピードが求められる金属加工に適した選択肢です。微細加工が可能なため、医療機器や電子部品などの精密部品の製造にも活用されています。
高いビーム品質による安定した出力と、熱影響の少なさは、変形を最小限に抑えながら高速に仕上げるのに役立つでしょう。消耗部品が少ないことからメンテナンスの手間を減らしたい場合にも、ファイバーレーザーは有力な候補となります。
以下では、Googleで「ファイバーレーザー」と検索し(2025年2月27日調査時点)検索結果の1番目に表示された企業が扱うファイバーレーザーをご紹介します。
フジクラのパルスファイバーレーザーは、高パルスエネルギーと優れたビーム品質を持った完全空冷設計のレーザー加工機です。金属・非金属のマーキングや半導体加工、レーザークリーニングなど多様な用途に対応します。
型名 | FLP-G11-030-10-3/7-04 |
---|---|
出力 | 30W |
発振モード | Q-スイッチパルス |
偏光 | ランダム |
波長 | 1080-1095nm |
繰返し周波数 | 30-80kHz |
パルス幅 | 50-200ns@30kHz |
パルスエネルギー | 1.0mJ@30kHz |
ピークパワー | ≧6.5kW(typ.8.0kW) |
ビーム品質(M2) | ≦1.6(typ.1.3) |
ビーム径(4σ) | 3mm/7mm |
電源インタフェース | D-sub 7W2pin |
制御インタフェース | D-sub 25pin (ロジック制御)/D-sub 9pin(コマンド制御) |
電源電圧(DC) | 24.0±1.0V |
最大消費電力 | 300W(12.4A) |
冷却 | 空冷 |
動作温度 | 0-40℃ レーザ出力部:15-45℃ |
動作湿度 | 30-85%(結露なきこと) |
ファイバケーブル長 | 4m |
外形寸法 レーザー本体 | 215x286x95mm |
外形寸法 レーザ出力部 | ビーム径3mm:40x207x40mm ビーム径7mm:40x278x40mm |
質量 | ≦6.5kg |
レーザー加工機はその種類によって素材の向き・不向きがあります。
ここでは少量生産を行う企業に向け、加工したい素材別におすすめのレーザー加工機をご紹介します。
レーザー加工機はその種類によって素材の向き・不向きがあります。
ここでは、大量生産を行う企業に向け、加工したい素材別におすすめのレーザー加工機をご紹介します。