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レーザーの安全基準・安全規格

レーザー加工機は強力な光を対象へ照射して、瞬間的に発生する超高温によって素材の物質を除去するといった仕組みで切断や穴あけ、彫刻などを叶える工業製品です。安全基準や安全規格に適合しないレーザー加工機は事故の危険を高めます。

レーザー製品の安全基準とは

レーザーは使用法を誤ると非常に危険

レーザー加工機は強力に収束された光を対象物へ照射し、そのエネルギーによって対象物を局所的に破砕しながら目的の加工を実現することが重要です。そのため、レーザー加工機は精密で正確な非接触加工を叶えられる反面、例えば木材や紙などの素材を対象とする際には火災の発生リスクが高まります。

また金属素材でも火花の発生といった問題だけでなく、表面に反射したレーザーが別の方向へ照射されることで作業員や周辺に悪影響を与えることもあるでしょう。

各国でレーザーの安全基準を規定

レーザー加工機やレーザーは使用法やルールを誤ると深刻な事故や被害に直結しかねないため、日本を含めて各国では様々なレーザーの安全基準や規格を規定しており、法律やガイダンスなどによって安全基準に適合した製品設計や使用法の厳守を求めています。

例えば、日本ではレーザーの使用によって作業員などへの人的被害が発生しないように「国際電気標準(IEC)」をベースとした<日本工業規格「レーザ製品の安全基準:JIS C 6802」を規定しており、危険度に応じたクラス分けを行っています。

レーザークラスの分類について

レーザー加工機の出力など製品の性能に応じてレーザーは危険度が分類されており、危険度の評価に応じて複数の「クラス」が設定されていることを覚えておきましょう。

例えば「JIS C 6802」におけるレーザーのクラス分類としては以下のようなものがあります。

クラスによって事故リスクが評価されており、それぞれのクラスの製品を使用する際には条件に合わせたリスクマネジメントを考えなければなりません。

レーザークラス分類による安全基準

レーザーの安全基準としては国際機関によるものや日本など各国で規定されているものがあり、それぞれを使用国の条件に合わせて把握しておくことが大切です。

IEC規格(IEC 60825-1)

「IEC規格(IEC 60825-1)」は国際機関によって規定されている安全基準であり、「国際電気標準:IEC(International Electrotechnical Commission)」へ加盟している国々(IEC加盟国)における共通の基準になっています。

その上で、例えば日本ではIEC規格(IEC 60825-1)をベースとして日本語訳した日本国内向けの規格(JIS C 6802)が規定されているといった仕組みです。

レーザー加工機といっても使用するレーザーの種類や波長、出力などによって条件は異なっており、「IEC 60825-1」ではレーザーの波長やエネルギー強度といった条件に合わせて安全策を講じたり、危険表示ラベルの内容を明記したりといった点を規定しています。

日本産業規格(JIS C 6802)

「IEC 60825-1」を日本産業規格が翻訳して、日本国内におけるレーザーの安全基準・安全規格としてまとめたものが「日本産業規格(JIS C 6802)」です。

「JIS C 6802」ではレーザーの強さや波長に応じて人体へのリスクを評価しており、それぞれの危険度に合わせて8段階のクラス分けが行われます。

クラス1

長時間にわたって直接にレーザー光(ビーム)を観察しても安全であり、さらに観察時に双眼鏡やルーペなどの観察用光学器具を使っても安全性が維持されると考えられるレーザー製品です。工業用のレーザー加工機としての出力はありませんが、レーザーポインターなどの製品として広く採用されています。

クラス1M

クラス1と同様に肉眼で直接のビーム観察を行っても安全なものの、観察時に双眼鏡やルーペといった光学器具を使用した場合には露光によって視覚障害のリスクを伴い製品です。なお、クラス1Mレーザーの波長領域については「302.5nm~4000nm」という領域の制限も規定されています。

クラス1C

美容整形や医療用に使われている医療用レーザーで採用されているクラスです。目を除いた人体組織へ直接にレーザー照射して作用させる目的で用いられており、照射されるレーザーの強度や波長についてはクラス3Rやクラス4といったクラス1よりも高レベルになる場合があります。

そのため使用部位や使用する製品によっては潜在的なリスクを有していることが重要であり、使用については適切なルール遵守が求められます。

クラス2

レーザーとしての波長が「400nm~700nm」の間に設定されており、可視光としてビームを放出するレーザー製品です。瞬間的にビームが目に当たっても通常はまばたきなどで目が保護されるため、瞬間的な被曝だけであれば安全だとされています。ただし意図的にビーム内を凝視した場合には事故リスクが発生する危険性があります。なお残像現象など一時的な視力障害が発生するリスクはあるでしょう。

なお、光学器具を用いることで目に対する障害が変化することはないとされます。

クラス2M

裸眼で被曝した場合にはクラス2と同程度の危険性を持つとされているレーザー製品です。

ただし、双眼鏡やルーペといった光学器具を使ってビームに被曝することで、目に対する障害などが発生する危険性がある点でクラス2のレーザー製品と分類されています。

クラス3R

意図的にビームを直視したり目に露光させたりすることは危険なレーザー製品です。ただし、直視した際の障害リスクはクラス3Bより比較的に少なくなっています。

なお残像現象による一時的な視力障害や、光に驚いたことで副次的なリスクが生じることもあります。

クラス3B

目に対してビームが露光した場合、たとえ偶然・短時間であっても危険性が認められるレーザー製品です。皮膚に触れることで皮膚障害(軽度)を引き起こしたり、可燃物への照射で発火現象を発生させたりすることもあります。

クラス4

ビームの直視はもちろん、皮膚への照射なども危険な出力を有するレーザー製品です。可燃物への加工による火災リスクも重要です。

FDAによるレーザークラス分類(21CFR Part 1040.10)

アメリカのFDA(米国食品医薬品局:Food and Drug Administration)が規定しているレーザーの安全基準です。なお、実際のレーザー規制の運用に関してはFDAの下部組織である「CDRH(Center for Device and Radiological Health)」の所管となっています。

アメリカ国内においてレーザー製品を生産・販売し流通させる場合、必ずこの規定を厳守した上で、最終商品として申請しなければなりません。

FDAのレーザー安全基準については「CFR(Code of Federal Regulations)」の12章、「Radiological Health」においてレーザーや放射線に関する規定及び総則がまとめられています。

レーザーに関連する法令

レーザーの人体に対する危険性やクラス分類とは別に、レーザー加工機などの製品を使用する際には各種法令によって安全対策や使用ルールを厳守することが必要です。

労働安全衛生法

労働安全衛生法とは、労働者が安全かつ衛生的に作業できるように企業や使用者に対して様々な義務を定めている法律です。工業用のレーザー加工機などを使用する場合、労働安全衛生法に則って安全に作業できるよう環境づくりやマニュアルづくりが必要となり、例えばクラス3以上の危険度を有するレーザー製品に関してはレーザー危機管理者の任命や障害防止対策の計画策定・実施が欠かせません。

レーザー加工機などの誤った使用によって火災や労災などの事故が発生した場合、労働安全衛生法が守られていなければ、労働安全衛生法違反として刑事罰の対象になることも重要です。

厚生労働省(レーザー光線による障害防止対策要綱)

厚生労働省は人々の健康や安全について様々な取り決めや基準の策定などを所管している行政機関であり、レーザー製品についてもレーザーの取り扱いによって労働者への健康被害などが生じるリスクに備えています。

具体的には「レーザー光線による障害防止対策要綱」を策定しており、レーザー光線の特性に応じたクラス分けや、レーザーガイドラインの作成・管理、また作業員の安全を確保するための防護服の使用といったルールを規定しています。

製造物責任法(PL法)

製造物責任法(PL法)は様々な製品や製造物について、製造業者などに損害発生時の責任を課している法律です。そのため例えば自社の製品や製造物が原因で事故が発生した場合、製造業者は被害者から損害賠償を求められる可能性があります。

そもそもレーザー製品は高出力の光エネルギーを取り扱う製品であり、クラスによっては人体へ深刻なダメージを与えかねない製品です。そのため、レーザー製品を製造・販売する事業者は、そのリスクを踏まえて安全対策に取り組まなければならず、もしレーザー製品の欠陥で事故が発生すれば損害賠償責任を負わなければなりません。

レーザー製品を使用する際の安全対策

レーザー機器管理者を設置

高クラスのレーザー製品を使用するような場合、レーザー危機管理者を設置して、レーザーの取り扱いやマニュアル、製品のメンテナンスといった面について責任者として従事させることが必要です。

また、レーザー製品を使用する作業員などはレーザー危機管理者の指導の下で安全かつ適正なレーザーの取り扱い方を厳守して、必要な保護具を使用するなどあらかじめ定められたルールに則って行動することも肝要です。

安全対策に関するマニュアル作成や研修を行う

レーザー危機管理者や事業者がどれほど安全対策を講じてレーザー使用時のマニュアルやルールブックを策定していたとしても、そもそも実際に現場で作業へ従事する労働者がそれらの内容を把握していなければ意味がありません。そのため、マニュアルなどを作成するだけでなく、必ずレーザー製品の取り扱いや危険性について研修や教育を実施して、それらの内容を周知徹底すると共に、事故が発生した時にはどのような状況が導かれるのか全員で共有することが大切です。

保護具を使用

保護メガネの使用

レーザーの使用に伴う健康被害として、まず注意すべきが目へのダメージです。そのためレーザー製品を使用する場合は、レーザー出力に応じた保護メガネを使用して、ビームが目に露光しないよう配慮しなければなりません。

また保護メガネはレーザーの光の被曝を防いでくれるだけでなく、発生した煙などからの悪影響をカバーできる場合もあります。

防護服などの使用

レーザーのクラスによっては目だけでなく皮膚などにも深刻な障害を与える可能性があるでしょう。そのため高クラスのレーザー製品を使用したり、レーザーを反射しやすい素材を使用したりする場合は、レーザーが皮膚に接触しても大丈夫なように防護服を使用することも大切です。

レーザー管理区域や警告・規格情報ラベルを活用

レーザー製品を使用する場合、そこがレーザーを使っているエリアであることを周囲へ明示して、注意喚起を行えるように警告や案内を行わなければなりません。また使用しているレーザー製品のクラスや特性、規格情報などについてもラベル掲示をするなど分かりやすく情報をアナウンスする取り組みも有効です。

レーザー加工機運転時の安全チェック項目

作業前点検

作業前点検はレーザー加工機の電源を入れる前や作業を始める直前に行うべきチェックを指します。日常的なメンテナンスに含めるのではなく、作業フローとして実施すべき点検です。

レーザー加工機の点検

電源を入れる前に、レーザー加工機に関する点検報告書や事前の作業者からの申し送りなどを確認。その他にもガスボンベの圧力・ガス残量やガス配管の確認、カバー類やダクト類の確認、各部品の不具合や異常の有無などもチェック対象です。

作業場の確認

作業場にオイルや水がこぼれていないか、何かの部品や器具が放置されていないかといった視認できる環境チェックは適宜行いましょう。接触や転倒などのリスクを減らし作業効率をよくします。

防護柵や案内板の設置など作業を注意喚起すアイテムや対策は作業担当者以外のスタッフの安全性を確保するもの。事前チェックでは必ず設置しましょう。

作業員の確認

適切な防護服や防護装備は整っているかも確認が大切です。故障や不備のある防護服・装備だと万が一の際に機能しません。

作業手順書や工程スケジュールなど、安全かつ適正にレーザー加工機を操作できるよう資料も備えます。

電源投入後の確認

作業前点検で適切な安全確保をチェックした後は、レーザー加工機の電源をオンにして、実際にレーザー加工機が正常に動作できるかどうかを確認します。

操作パネルの表示や警告灯の状態などをチェックして、エラーの発生やトラブルの有無を視覚的にチェック。またモーターやギア、ベルトといった駆動部の異常は振動や異音を伴うケースが多いので、通常と違う現象が発生していないかも念入りに調べましょう。

運転中の注意事項

レーザー加工機の運転中は、加工対象となるワークの状態やレーザー加工機そのものの動作、また周辺環境や他の作業員の動きなど、多角的に意識を巡らせて安全確保を行うことが重要です。

全般的な確認

複数のワークを連続して加工するケースでは、ワークの交換や作業台の清掃などを行う際は必ずレーザー加工機の操作キーをオフにしてください。また操作中や作業中であることを対外的にアナウンスできるよう、掲示物の準備や表示方法の統一などの対策も必要です。

レーザー光の扱いに関する注意

レーザー加工機の機種や設定条件に合わせて、レーザーが反射しないように対策して火災事故や粉塵爆発といった事故が発生しないよう注意しましょう。反射しやすい素材を加工する際や危険性の高いレーザーを使用する場合は、保護眼鏡や防護服を着用し、作業員の失明リスクや火傷リスクなどに備えてください。

レーザー加工機の運転中は作業台に身を乗り出す・手を入れるといった行動は厳禁です。安全カバーの開閉時にもきちんと密閉やロックを確認してください。

トラブル対策

手順書や条件に従って作業し、予定にない素材やワークの加工は行なわないよう徹底しましょう。

作業中は排気システムや集塵機が適切に稼働していることを常に確認してください。煙やガス・発火などの異常発生がないかも要チェックです。

安全装置が作動した際には直ちに機器を停止させてください。

作業終了後の確認事項

レーザー加工機を使用した後は加工品の状態をチェックして、想定通りの加工が実現されているか調べることが必要です。もし不具合が発見された場合は必ず原因を調べて、メンテナンスや設定変更といった対策をとりましょう。

レーザー加工の内容によっては、レンズの清掃や作業台の安全確認といったセルフメンテナンス以外に専門業者によるチェックも必要です。

安全装置の取り扱い

安全装置には複数の種類があります。不測の事態が発生した際に落ち着いて適切に対応するために、それぞれの役目や使い方を熟知しておきましょう。

非常停止システム

非常停止システムはレーザー加工機の作動中に問題が発生した場合、異変を検知して自動的にレーザー加工機を停止させるシステムです。加工機本体に自動制御機能として付加されているものだけでなく、周辺機器も併せて設置した非常停止システムを作っているタイプがあります。

どのような状態になれば非常停止システムが作動するか把握することは大切です。システムがあるからと気を緩めると微細な違和感が大きな事故に発展します。

キースイッチ

キースイッチとは鍵の所持者のみが使用できるように限定し、担当者以外の使用を制限でする装置のこと。ワークの交換やレーザー加工機の調整などで操作場所を離れたりする時、キースイッチをオフにしてキーを抜き取り、担当者自身が保持することで誤操作を防げます。

衝突防止装置

レーザー加工機の駆動部が作業員に衝突したり、作業員が挟まれたりする事故を防ぐ装置です。特に大型のレーザー加工機はレーザーだけでなく駆動部に対する物理的なダメージにも備えなければなりません。

火災防止装置

発火や燃焼を検知した場合、レーザー照射を停止させてそれ以上のエネルギー放出を防ぎます。特に可燃性の素材や高出力のレーザーを使用している場合だと火災事故が起きやすくなるため、火災防止装置の使い方やエラー情報は事前に確認してください。

火災が発生した際に備えて、消火設備の有無や使用方法、緊急連絡フローも把握しておくべき事項です。研修や定期訓練を導入し、非常時でも適切な行動が取れるよう訓練しましょう。

安全扉・レーザー保護設備

レーザー光が外部へ反射したりワークに接触した部分の火花や光が拡散した場合に備え、目にダメージを与えないように安全扉や保護カバーといった保護設備の状態も安全対策の大切なポイントです。

火災防止上の注意事項

レーザー加工機を使用中に火災が発生する事故は日本各地で発生しており、可燃性素材をワークにしていない場合でも条件によっては火災事故の危険が生じます。

消火器や消火設備を準備し、素材の特性に合わせた消化剤や消火方法も周知徹底するのが基本です。

レーザー加工機の安全基準に関するまとめ

レーザー加工機は緻密な加工を実現できる工業用製品であり、様々な用途や素材に合わせて使えることが魅力です。反面、強力な光エネルギーによって加工を叶えるレーザー製品は使用法を誤ると作業員や周辺環境へ深刻な事故や被害を引き起こすリスクもあり、世界的にも安全基準や安全規格を定めて適切な使用法やルールを定めています。

レーザー加工機の安全な取り扱いは法的にも倫理的にも重要と認識した上で、適切な管理を考えていきましょう。

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