複屈折とは、ある種の物質へ光を当てて透過させる際に、光の屈折が1つでなく2つになる状態を指します。
例えば川の上から川底にある石を見ようとした時、水面に見えている石へ真っ直ぐに腕を伸ばしても川底にある石とは少しずれた位置へ手が触れてしまいます。これは水の中を光が通る際に屈折することが原因です。
一方、方解石などある特定の物質に光を透過させると、屈折現象が同時に複数発生し、例えばそれを通してものを見ると屈折率の違いによってものが二重に見えるといった現象が起こります。これが複屈折です。
光の屈折の程度は「屈折率」として表されますが、屈折率は物質の構造や素材、さらに温度といった様々な要因によって影響を受けます。
つまり物質の内部の温度分布が一律でなく、高温部分と低温部分といった温度勾配が発生している場合、温度による性質変化の影響で屈折率が変わってしまい、本来であれば複屈折が生じない物質でも熱による複屈折が生じてしまうことがあります。
このような温度勾配による複屈折を「熱複屈折」と呼び、熱複屈折はレーザー加工機などの品質を考えるうえで重要なポイントです。
熱複屈折は、固体レーザーを使ったレーザー加工機などにおいて、レーザー光のエネルギーが熱エネルギーとなって媒質へ吸収されることで温度勾配が発生し、その影響によって熱ひずみが生じることで引き起こされます。
そもそも、固体レーザーでは励起光エネルギーは発振や増幅へ使われますが、エネルギー使用率は100%でなく、一部は固体レーザーの材料物質へと吸収されます。しかしその結果、材料物質の温度が上昇して温度分布が生じ、想定外の熱複屈折現象を発生させてしまうのです。
複屈折は1つの物質において複数の屈折が発生することであり、シンプルにいえば入射した光が異なる屈折率に応じてそれぞれ違う方向へ出射される状態です。
つまり、例えば1本の強力なレーザービームを発生させられたとしても、熱ひずみの影響によって材料物質内で熱複屈折が発生すると、レーザービームの全てが本来に想定している焦点位置に集光せず、その一部が想定外のポイントへ照射されてしまいます。
その結果、レーザービームの強度が低下してレーザー加工機の加工品質の劣化につながります。
複屈折は特定の物質によって発生する現象ですが、熱複屈折はそもそも複屈折が発生しない物質であっても温度勾配による熱ひずみによって生じる現象です。そのため、例えば固体レーザーの材料物質の内部に構造的な欠陥や歪みなどが存在していれば、それだけ光エネルギーが余分に吸収されてしまって熱複屈折の可能性が高まります。
言い換えれば構造的に高純度の物質を獲得できれば熱複屈折のリスクを低減できますが、その他にも90度偏光子・偏光板などを組み合わせることで熱複屈折を相殺して対策することができます。
UV、グリーン、1μmの3波長を自動切り替え、パルス幅は340fsから10psまで可変。各種材料に合ったレーザー光の選択&適した非熱加工が行えます。
20KWの高出力で20,000㎜/minを超える高速切断が可能、プラズマを上回る切断速度を実現。40㎜までの厚板切断に対応しています。
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